「女性管理職520人」を前倒しで達成できた理由

――4月に女性活躍推進法が施行され、各社数値目標の公表が義務付けられました。厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」ではそれが横並びで見ることができ、非常に興味深いです。日本生命は、女性管理職の比率を「2020年代に30%を目指し、2020年に20%以上とする」と発表されました。この数値が出た経緯を教えてください。

中村:2014年に初めて「女性管理職520人」という目標値を公表したのですが、育成計画の成果が想像以上に早く出て、2年前倒しとなる今年の異動でクリアできました。4月から施行される女性活躍推進法に伴い、新たに目標を立てるなかで、政府が目標としている30%を2020年代に目指すことにしたのですが、少し遠い目標になるので、身近なところで2020年に20%という数値を掲げることにしました。先日達成した管理職520人が15%弱になりますので、十分に達成可能だと思っています。

――「管理職520人」を前倒しで実現出来た理由をどう見ますか。

中村:どういう候補者がいるかを人事部と所属長が固有名詞で把握し、しっかりと連携を取りながら進めることができた点がまずひとつ。そして、営業でも同じように管理職候補を集めた研修があるのですが、具体的な目標を掲げてやってきたこと。この2つがスムーズに進んだことで、実現可能になったのではないかと思っています。

――取り組みは、当初から順調でしたか。もしくは、何かの阻害要因があったけれど、クリアしてきたということでしょうか。

中村:初めての取り組みですから段階を踏んで進めてきましたが、対象者から「プレッシャーを感じる」という声もありました。そこで、彼女たちのキャリア形成を進めると同時に、共に働く男性や管理職の意識改革に着手しました。男性の意識改革、所属長が女性を育成していくという意識を持ってもらうことで、男女ともに活躍しやすい環境が出来上がるという考えからです。

――昨年から、役員が、課長相当職にあたる女性管理職のメンターをしているそうですね。

中村:やはり課長から上の層がなかなか育たないという課題から、さらに上を目指してもらえるようにとスタートしました。昨年は22人の役員が、課長2年目以降の81人の女性のメンターをしています。皆、課長として一生懸命なのですが、まだその先をイメージしていない人がほとんど。でも、そうではなく、「たまには部長と意見を戦わせてはどうか」とか「上を目指してキャリア形成をするなら、強みを掘り下げるだけではなく、仕事の幅を広げたほうがいいね」などと、アドバイスをしていますね。

――課長までは女性が育ってきたが部長まではまだ…と悩む企業にとっては参考になる取り組みです。女性が活躍することによるビジネス上のメリットはどうでしょうか。

中村:女性社員たちからの提案でスタートしたサービスが好評です。学資保険を発売したときに、子どもを持つ女性社員のみで構成されるチームが提案した「育児相談ほっとライン」というサービスもスタートしたのですが、学資保険の初年度の販売件数は10万件を突破。こうしたアイデアは、男社会のなかではなかなか思いつきません。女性特有の健康上の悩みを女性スタッフが応対するサービスも女性の声から生まれたものです。

管理職候補層に対する選抜研修の模様。2年間にわたるプログラム
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