――その経験で自分自身にどんな変化はありましたか。

四戸:プレゼン自体よりも、実はその後に、仕事に対する考え方がガラッと変わる出来事があったのです。ある海外担当者から、「あなたがグローバル比較をしたデータを参考にして、実際に海外拠点の材料費が下がって、これくらいの収益が出た」という話を聞いたのです。びっくりしました。自分がやった仕事が、直接、会社の損益にインパクトを与えたことが、驚きであり、刺激的だったんです。そのとき、私の仕事に対するスタンスが一気に変わりました。「仕事って面白いな」と。

 それからもその課長からは、女性だとか新人だとかは一切関係なく、次々と仕事を任されました。時には「役員のところに行って一人で説明してきなさい」などいう大役を振られたり。厳しいといえば厳しいのですが、仕事への興味とやりがいがどんどん大きくなりました。

――その後のキャリアで転機になったことは?

四戸:大きな転機が2つありました。1つは2007年、39歳のときに日産自動車に2年間出向したことです。入社後10年間は海外事業本部で幅広い業務を経験し、その後管理職として購買に異動になったのを機に出向を打診されたんです。でも、最初は正直乗り気ではなかったんですね。ずっと同じ社内で育ってきたので、出向で社外に出ることがものすごく怖かった。

――大きなチャレンジだったと。出向経験はキャリアにどのような変化をもたらしましたか。

四戸:日産自動車と当社では、仕事の進め方から役割分担、組織のあり方までかなり違い、カルチャーショックを受けました。と同時に多くの刺激も得て、仕事に対する視点や物事の考え方の幅が大きく広がった。そして2つ目の転機が、タイで3年間の海外駐在を経験したことです。日産の出向から戻って翌年、今度はタイランド社に出向するように言われたのです。

タイランド社に購買担当として、夫を連れて3年間赴任

――それまで女性社員が海外駐在した例はあったのですか。

四戸:私が2例目ですが、アジア地域の駐在は女性初でした。タイランド社では購買業務のシニアマネージャーとして、部品・資材から事務用品まで、あらゆる購買品の調達・購買を一手に担いました。

――海外駐在の話があったときご家族はどのような反応でしたか。

四戸:前から私が海外駐在になったらどうする?なんて話はしていましたが、夫にタイ転勤のことを伝えたら、「一緒に付いて行く」と二つ返事でOK(笑)。彼はもともとタイに興味があり、帰国後の再就職先のあてもありましたので。上司は驚いていましたけれどね。夫はタイでは基本的に専業主夫として過ごしました。タイ語を習ったり現地で友達を作ったりして、海外の生活を楽しんでいましたよ。

――四戸さんは入社当初は、寿退社して夫の海外駐在に付いていくことを夢みていたのに、実際には自分の海外駐在に夫を連れていかれたということですか。

四戸:確かに、まったく逆になりましたね(笑)。夫がタイに付いてきてくれたことは結果として非常に心強かったです。初めての海外赴任でもあり、仕事でかなりプレッシャーがかかる場面もありましたので、そういうときに夫がそばにいてくれて、いろいろと支えてくれたことは、本当に助かりました。

3年間赴任したタイランド社
タイ赴任翌年に大洪水が起きるなど大変なことも多かったが、「夫がそばにいて支えてくれた」と四戸さん