なぜそれが「好き」なのか? 「得意」なのか? も深く考えてみよう

 「好きなもの」「得意なもの」「勝てるもの」を絞り込んでみたあと、それらの「好きグループ」「得意グループ」「勝てるグループ」を眺めてみると、何かしらの共通点が見つかるはずです。例えば「好き」に入っているもので「映画」「読書」など情報インプット系が多いなと思ったら、「どうして情報インプット系が好きなのか?」を考えてみましょう。

 今はコミュニケーションや時間管理・プレゼンなどを教える立場にある私ですが、実は昔は「料理研究家」を目指してレシピ開発や資格試験の勉強をしていました。しかし、「ストーカー分析」で調べていくうちに、私は「料理」そのものが好きというよりも、「料理」という媒体を通じた人との関わりが好きだと気付いたのです。

 私のストーカー分析は下記の通りです。

転勤族の家庭に育ったせいか、友達と仲良くするのが苦手でした。仲良くしたいと心では思っていても、それを素直に表すことができず、バナナケーキを焼いて学校に持って行くことによって人と仲良くしようとしていました。

人見知りが激しく最初はうちとけなくても、「乾杯!」のひとことで皆と仲良くなることができるから飲み会が好きでした。

 つまり、別に料理という手段にこだわらなくても、何かしらの媒体(職業として関わっている図解、プレゼン、時間管理、早起きなど)を通じて人と関わればOKだったと気付いたのです。

 今のコミュニケーション、時間管理、プレゼンも全てコミュニケーションの手段を教えているというそのことに気付いてから、目の前の仕事がより楽しくなりました。

「勝てる」に至らなかったスキルでも、その経験は必ず役立つ

 自己実現のためにたくさんの資格を取る人を、人はよく「資格マニア」と揶揄します。私も資格マニアでした。きき酒師、酒匠、ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル、パン教師師範、マクロビオティック師範…と、食にまつわる資格をたくさん取得しました。とりあえず興味の赴くままに、様々な試験勉強をしてきました。

 これらの資格は公認会計士、弁護士などといったような国が認める公的な資格ではないため、実は取得してもキャリアとして見なされないことが多く、転職する時に履歴書に書いても全く効力を発揮しません。しかし、一つ一つの資格をクリアしていく達成感を味わうことにより、自分だってやればできるという自信をつけることができたのも事実です。また、一見無駄だと思っていても必ず何かの機会で身になってくることも実感しています。

 例えば、私は独立してから経営者の方や目上の方と会食する機会が増えました。ある程度上の立場の方は、食やワインに対する知識や好奇心が旺盛なことが多いのです。そんなとき、私が昔取得した資格が活き、とっかかりとしてグルメネタで場の雰囲気を円滑にすることもできるようになりました。

 料理の知識は、発想を広げたり、段取り力をつけたりするのに役立ちました。例えば1つの大根から3通りの調理方法を考えることは、1つの企画から3通りのアプローチ方法を考えるのと一緒のこと。パンの発酵時間を見越して他の料理を作るといった段取り力は、プロジェクトの終了を見越してメンバーの進捗状況をそれぞれチェックしていく段取り力とも通じるのです。

 つまり、「資格マニア」として一生懸命になった経験は、今すぐに直接役に立つことがなくても、必ずなんらかの形で自分の血肉となっていることが分かったのです。

 日々自分の想いが動いていて、あれもやりたい、これもやりたい、でもどうしたら良いかわからない。いろんな習い事をしたり、資格を取ったり、異業種交流会に出たり、転職を繰り返したりするうちに見えてくるかなと試してみたけど、どうもしっくりこない。もし、そう思っている方がいらしたら、やみくもに動き回る前に、一度徹底的に自分を見つめ直して欲しいと思います。

 見つめ直すことで、初めて自分はどんな自分にだってなれる! という、ゆるぎない「軸」を見つけることができるのです。「ストーカー分析」がその一助となれば嬉しいです。