「あえて型にはめる」ことで暗示がかかる

 このように「この行動で私はうまくいった」というパターンを繰り返すことによって、自分で自分に良い暗示をかけることができます。何も考えずに自然と身体が動いてしまう。それが習慣となれば、余計な雑念にとらわれずに行動の幅が広がることを実感します。

 一見不自由そうな「あえて型にはめる」行動が、なぜ思考の自由度を高めるのにつながるのか、最初は不思議に思っていました。一般的に「型にはめる」という言葉はあまりいい意味で使われないことが多いですよね。面白みがない、創造性がないというイメージがあるからでしょう。

 私は、夫の行動を観察している過程で、あえて型にはめることがかえって自由度を高める理由が分かったような気がしました。パターンが固まらないうちは、あえて型にはめないと、思考があちこちに飛んでしまって収集がつかないことがあると気付いたのです。

 私事になりますが、夫は会社員をしつつ、夜間の調理師学校に通い調理師免許を取得しました。私は昔、料理研究家になりたかったということもあり、料理には少しばかり自信があったのですが、今や料理のスキルは夫には及びません。

 私と夫の成長度の違いは、一度徹底的に「型」にはめて学んだか、学ばなかったかの違いでした。私の料理はとてもおおざっぱです。いつも料理は目分量。レシピ本をみても、つくり方だけ頭に入れて、あとは自分の勘がすべて。いわば、「いいとこどりのつまみ食い」。この方法だと、一度うまくいっても、同じ料理をもう一度作ろう、というときに再現できないのです。

 一方、夫の料理の仕方は堅実。まずはキッチリと、習ったことを最初は忠実に復習することから始めます。それを繰り返してスタンダードを知り、自分のモノにしてから、やっとアレンジを加えます。基礎を繰り返すので、技術が自分の血肉となり、そのあとにアレンジを加えるから再現性もあるわけです。

 まずは素直に成功パターンを徹底的に繰り返し、「型」を覚えてから、自分流にアレンジを加えることにより、本当のオリジナルができあがることを実感しました。自分なりの工夫は、型という基本の土台がきっちり建ったところにこそ生まれるものではないかと思ったのです。

 自分の成功パターンを一度「型」として覚え、愚直に繰り返してみましょう。頭で考えなくても無意識に身体が動くようになったとき、やがて自由な発想が生まれてくるようになりますよ。

写真/春風清(PIXTA)