「じゃないほう芸人」と呼ばれた西村さんの魅力とは

 一方の西村瑞樹さんは、一時期はほとんど単独での仕事がない状態でした。コンビとしてネタ番組や営業に呼ばれるだけだったのです。

 しかし、最近になって少しずつ「じゃないほう芸人」の西村さんにもスポットが当たり始めています。「陸海空~」では、インスタグラムで「いいね!」をもらった数に応じて旅の資金が得られる海外ロケ企画に挑戦しています。旅行中の西村さんにはタレントとしての自覚がほとんど感じられず、淡々と自由奔放に振る舞っているのですが、それが型にはまっていなくて妙におかしいのです。

 「水曜日のダウンタウン」の企画でも、常識はずれの奇行をたびたび見せていることから、番組内で「サイコ西村」と呼ばれるようになっています。

 バイきんぐのコントでも、西村さんがとぼけたキャラを演じて、小峠さんがそれにあきれながらツッコミを入れる、という形が基本になっています。西村さんがコントで演じているあの独特のズレた感性を持っているキャラクターは、西村さんの素の状態にかなり近いのです。

 バイきんぐのネタを作っているのは小峠さんです。小峠さんはコントの中での自分たちの関係性を「ボケとツッコミ」ではなく「バカと注意」と呼んでいます。バイきんぐのコントでは、実はいかにもボケっぽいボケというものはなく、変な人(バカな人)が自分では当たり前だと思っていることが他人から見るとおかしい、というパターンが目立ちます。それは、普段の西村さんのキャラクターそのものなのです。

 個人的には、西村さんは「サイコ」というよりも、他人がどう思うかということにあまり興味がなく、自分が好きなこと以外にはこだわりがない人、というふうに見えます。

 実は、一つの道を極めるアスリートや研究者などにはこういうタイプは珍しくありません。ただ、芸人は人前に出て芸を披露するのが仕事です。当然、お客さんの反応を気にするのも仕事の一部であるはずです。芸人なのになぜか他人の反応に興味がないというところが、珍しがられている要因でしょう。

 西村さんの「サイコ」な一面は、まだまだ十分に掘り尽くされているとは思えません。今のところコンビとしては小峠さんの活躍が先行してしまった印象がありますが、これから間違いなく西村さんの追い上げが始まるはずです。元祖「遅咲き芸人」のこの活躍は、高齢化が進むお笑い界でも明るい希望になるでしょう。

苦労を重ねた末に才能を認められたバイきんぐ。これからの活躍も見逃せません (C) PIXTA

文/ラリー遠田 写真/PIXTA

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