開き直ったことで、徳井さんの面白さが開花

 平成ノブシコブシが浮上する契機になった番組の一つが、2010年に始まった「(株)世界衝撃映像社」(フジテレビ)です。この番組では、さまざまな芸人が世界各地で取材をして、衝撃的な映像を撮ることに挑みます。

 この番組には数多くの芸人が出ていたのですが、その中でも平成ノブシコブシのロケは大ヒット企画になりました。その理由は、徳井さんが自由奔放に振る舞う姿が話題になったからです。

 低迷期が長かったこともあって、徳井さんはこの番組で完全に開き直って好き勝手に行動していました。秘境で暮らす部族のところに滞在するロケでは、現地民とすぐに打ち解けて仲良くなり、平然と虫を食べたりしました。「ナスD」の元祖とも言えるかもしれません。

 また、徳井さんは、この番組のロケ中に突然、「実は5年前から結婚している」という話をポロッと口にしました。相方でありながらそのことを本当に知らなかった吉村さんは、なぜこのタイミングでそんなことを告白するのかとあっけにとられていました。吉村さんは普段から「破天荒キャラ」を自称していますが、この番組でついに、徳井さんのほうが本物の破天荒であることが明らかになったのです。

じわじわと独自の地位を築いていった二人

 この時期に、彼らと同期のピースの二人がグイグイと人気を伸ばしていました。そして、ピースの二人が出演するコント番組「ピカルの定理」が始まり、平成ノブシコブシもレギュラーの一員に選ばれました。この番組では、上司役の吉村さんと部下役の綾部祐二さんが男性同士で密かに愛を育む「ビバリとルイ」というコントが人気になりました。

 その後は、吉村さんがバラエティータレントとしてどんどん頭角を現してきます。「破天荒」を名乗って大声で強気で振る舞おうとするも、実は何もできずに笑ってごまかすダメなやつ、というキャラクターを徐々に確立していきました。もともとイケメンである上に、真面目で一生懸命なところが透けて見えるので、そういうところが愛される要因にもなっているのでしょう。

 そして、最近では「内村てらす」などの深夜番組で徳井さんが単独でテレビ出演するのもよく見かけるようになりました。徳井さんの面白さの秘密は、自分のことを棚に上げてアイドルや芸人のことを熱く鋭く論評するところです。本来、芸人なら自分が面白くないといけないのに、解説者キャラのときの徳井さんは、あえて面白くあることを放棄して、解説役に徹しています。それが異様すぎて1周回って面白く見えているのです。

 バラエティー対応力の高い「破天荒キャラ」の吉村さんと、何をしでかすか分からない爆発力を秘めた「リアル破天荒」の徳井さん。対照的な二人が組んだ平成ノブシコブシは、誰にもまねできない独自の地位を築きつつあります。

時間をかけてブレークしたことで、独自の地位を築くことができました (C)PIXTA
時間をかけてブレークしたことで、独自の地位を築くことができました (C)PIXTA

文/ラリー遠田 写真/吉本興業、PIXTA

この連載は、隔週土曜日に公開。下記の記事一覧ページに新しい記事がアップされますので、ぜひ、ブックマークして、お楽しみください!
記事一覧ページはこちら ⇒【ラリー遠田のお笑いジャーナル】