独自のツッコミ芸が生まれた瞬間

 このギャグが生まれた瞬間のことは私もよく覚えています。数年前、ロンドンブーツ1号2号が司会を務める番組に春菜さんが出ていたのです。まだテレビに出始めの頃で、春菜さんの顔にも緊張の色が見えました。そんな中で、司会の田村淳さんから何度も「角野卓造さんに似ている」という話を振られたのです。春菜さんが必死になって声を張り上げて「角野卓造じゃねえよ!」と言い返すと、場が大いに盛り上がっていきました。その後、他の芸人もこれを真似するようになり、春菜さんにネタを振るようになりました。それがどんどん発展していって、ひとつの定番の流れとして定着したのです。

 今では、芸人以外の人でも、春菜さんに対してこれを仕掛けてきます。彼女は律儀にそれを打ち返していきます。すると、そこから自然に笑いが生まれます。この技を使うことで、春菜さんはどんな人が相手でもその人と距離を縮めることができます。

 この得意技からもうかがえるように、春菜さんは基本的にツッコミ担当です。でも、他のツッコミ芸人にありがちな、誰かを批判したり文句を言ったりするという印象はありません。むしろ、誰かにイジられて言い返すという形のツッコミを得意としています。ここに彼女の特徴があります。

 本来の春菜さんは、どちらかというとおとなしく内気な人です。お笑い養成所時代にも、暗くてなかなか前に出られないタイプだったそうです。そんな春菜さんは、自分と同じおとなしい性格の箕輪はるかさんと出会い、意気投合してコンビを結成することにしたのです。