欽ちゃんは当時73歳で大学入学

 一方、キャリアアップとは無関係に、単なる知的好奇心から大学の門をたたく人もいます。萩本欽一さんはこのタイプでしょう。大学入学当時に73歳だった萩本さんが、「大卒」の資格を得ようと思った理由は何なのでしょうか。萩本さんは体力の衰えを理由に2014年3月に舞台を引退しました。

 そこから何か新しいことを始めようと考えて、大学を目指すことにしたのです。70代に入ると記憶力も悪くなり、覚えたこともどんどん抜け落ちていきます。それを防ぐには、どんどん新しく知識を入れていけばいい。そのためには勉強をすればいいじゃないか、というのが萩本さんの考えでした。

 萩本さんは1年間の猛勉強の末、社会人特別入学試験で英語と小論文と面接の入学試験を受けて、見事に合格。2015年から通い始めました。孫の世代に当たる10~20代のクラスメイトと楽しく交流を深めているそうです。

 今まで挙げた二つのケースでは、いずれも本人に強いモチベーションがあって大学を目指しています。こういう場合には受験勉強で挫折をしないことが多く、大学に受かったらそのまま卒業するまできちんと通い続けることがほとんどです。

 一方、番組の企画などで受験勉強を始めるという場合には、これとはまた違った形になります。そもそも、番組の企画で受験勉強をするような人は、その時点で多忙な仕事に追われている売れっ子タレントであることが多いのです。最近のケースで言うと、春日さんも淳さんもそうです。そうすると、本人がどんなに本気で挑んでいても、勉強時間が限られているため、合格することがなかなか難しかったりします。実際、春日さんも淳さんも今年の受験では合格を果たすことができませんでした。

 大学を出て芸人になる人は珍しくなくなりましたが、芸人になってから大学に行く人はやはりそれなりに珍しく、今でも希少価値があります。人を笑わせるという、知識や教養が求められないと思われている仕事をしているからこそ、大学に入って「真面目」な一面を見せることにはメリットがあります。

 今では芸人がコメンテーターとして社会的な出来事についてコメントを求められるような場面も多いため、芸人の間でも勉強をすることのニーズは高まっています。本気で大学を目指す芸人はこれからも増えていくはずです。

芸人になってから大学に行く。学ぶ意欲があれば、どんなタイミングでも遅くはないはずです (C)PIXTA
芸人になってから大学に行く。学ぶ意欲があれば、どんなタイミングでも遅くはないはずです (C)PIXTA

文/ラリー遠田 写真/PIXTA

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