M-1グランプリはアカデミー賞!?

 それは、芸人という職業の役割が変わってきたからです。

 一昔前までの芸人は、「作り手」よりも「演じ手」としての役割を求められていました。

 漫才師が演じる漫才は「漫才作家」と呼ばれる人の手によって書かれていて、それを自分たちなりにアレンジして、舞台上でうまく演じるのが芸人の仕事だと考えられてきたのです。

 しかし、近年になって、芸人は作り手と演じ手を兼ねることが一般的になりました。

 現代の若手芸人は、自分が面白いと思うことを自分で表現したいからこそ、お笑いの道に進んでいます。

 ネタ作りの作業においては、「座付き作家」と呼ばれる人がサポートをすることもありますが、ほとんどの場合、芸人自身が主導権を握っています。

 例えば、漫才の大会「M-1グランプリ」には、その日に最も優れたパフォーマンスを見せた漫才師を決めるための「オリンピック」のような側面もありますが、一方では、作品として最も優れた漫才を決める「アカデミー賞(作品賞)」のような側面もあるわけです。

M-1はオリンピックでもあり、アカデミー賞でもある (C) PIXTA
M-1はオリンピックでもあり、アカデミー賞でもある (C) PIXTA

 つまり、今どきの芸人は、作家であると同時にプレーヤーでもあるのです。