本人にとっても、意外だった司会業

 「スッキリ!!」などで司会の仕事が始まった頃、加藤さん自身はそれがこれほど長く続くことになるとは思っていなかったそうです。そのぐらい、司会業というのは本人の意識にもなかったことでした。

 ただ、いざ番組が始まってみると、加藤さんは天性の司会者としての素質を発揮し始めたのです。加藤さんが好感度の高い司会者となった理由は、大きく分けて3つあります。

 1つ目は、「人として器が大きい」ということ。デビュー前から付き合いがあるおぎやはぎの2人をはじめ、加藤さんを慕っている後輩芸人は大勢います。プライベートでは3人の子どもを持つ父親であり、愛妻家としても知られています。そんな加藤さんには人間としての魅力があり、それが多くの視聴者を引き付けているのだと思います。

 司会業を始めた頃の加藤さんにとって大きな転機になったのが、相方の山本さんのトラブルです。未成年女性への暴行疑惑が報じられ、山本さんは事務所を解雇され、芸能活動を休止しました。

 このときにも、加藤さんは「スッキリ!!」の冒頭で涙ながらの謝罪を行いました。それでもコンビ解散は明言せず、相方の復帰を待ち続けることを選んだのです。2016年に山本さんは復帰して、極楽とんぼとしての活動も再開されました。この一件も、加藤さんの「男気」を世に知らしめる出来事になったと思います。

 2つ目に「視野が広い」ということが挙げられます。テレビの収録現場で、加藤さんはその場の空気を的確につかんでいます。これは「ケンカ芸」などで培われてきたものでしょう。

 バラエティー番組で暴言を吐いたり、暴力的なしぐさを見せるときには、何よりも冷静な目線が必要です。「本気で怒っている」と思われたら笑ってもらえなくなる一方、完全に「怒ったふりをしている」と見抜かれても大きな笑いには結び付きません。「怒ってるんだけど怒ってない」という微妙なところにしか笑いが生まれる余地はないのです。

 ケンカ芸を得意としてきた加藤さんは、そのあたりのバランス感覚が自然に身に付いています。だからこそ、司会をやっているときにも、極端な意見を言う人や、感情的になっている人をうまく誘導して、その場の空気を和やかにすることができるのでしょう。