ブルゾンちえみが「一発屋」にならなかった理由

 一方、ブルゾンさんの場合はどうでしょうか。彼女は、ブリリアンという後輩芸人を引き連れて、キャリアウーマンのキャラクターを演じるネタで脚光を浴びました。そして、2月にはピン芸日本一を決める「R-1ぐらんぷり2017」(フジテレビ系)の決勝にも進んでいます。

 ただ、これ以降、ブルゾンさんが新しいギャグやネタをテレビで発表したりする場面はありませんでした。なぜなら、既にそれを求められるような立場ではなかったからです。いわば、彼女はこのときから既に「芸人」ではなく「タレント」として認識されていたのです。

 ブルゾンさんがバラエティー番組に出るときには、芸人ならではの体を張ったパフォーマンスや鋭い切り返しは要求されていません。それよりも、彼女がどういう人間なのか、どういうものが好きでどういうことを考えているのか、というのを率直に語ることが必要とされていました。彼女は、新人らしからぬ落ち着いた態度でバラエティー番組に出て、ますます好感度を上げていきました。

 徐々にCMの仕事も増えて、4月には「人は見た目が100パーセント」(フジテレビ系)でドラマにも出演しました。8月の「24時間テレビ 愛は地球を救う」(日本テレビ系)ではチャリティーマラソンのランナーを務めて、90キロのコースを見事に完走。最後までメイクが落ちなかったことから「どんな化粧品を使っているの?」という声が上がる意外な現象も起きました。仕事の幅を広げて、ブルゾンさんは名実ともに「芸人」の枠に縛られない存在になっています。

 また、本人がどんどん世に出ていく中で、ネタの中のキャラクターやフレーズが独り歩きするという現象も起こってきました。ブルゾンさんのネタが多くの有名人や一般人にまねされて、その写真や動画がアップされました。ブルゾンさんのメイクやファッションやヘアスタイルをまねする人もいました。