自分を奮い立たせて前に出続けるゆりやん

 ゆりやんさんはもともと、どちらかというと気が弱くておとなしい人物なのではないかと思います。ただ、彼女は決して舞台上では引っ込み思案にはなりません。普段は気が弱いからこそ、いざというときに開き直って、自分を奮い立たせて前に出ることができるのだと思います。いわば、ここでは弱点だった部分が強みに変わっているのです。

 また、レイザーラモンRGさんも認めている通り、ゆりやんさんのネタは同業者からも高く評価されています。発想力、構成力、表現力それぞれに並外れたものがあり、ネタを見ているだけでそれが伝わってきます。もともとの発想にオリジナリティーがあって面白い上に、それをネタの形に組み立てて、表現するのも上手なのですから、文句のつけようがありません。

 「THE W」でゆりやんさんが1本目に披露したのは、海外のドラマや映画でよくある場面などのモノマネを組み込んだネタでした。英語を話す外国人を自然に演じる語学力と演技力が抜きん出ている彼女だからこそできるネタです。

 個人的には、2本目のネタが特に印象的でした。ゆりやんさんが「ドラえもん」っぽいキャラクターに扮して、自分が普段感じている怒りや不満をぶちまける、というもの。このネタで爆笑が起こるということは、笑っているお客さんがゆりやんさんの味方をしているということです。

 彼女の単なる個人的なグチに思わず共感して笑いたくなってしまうくらい、そこに持ち込むまでの技術が光っているのです。既に人気芸人としての地位を築いているゆりやんさんですが、今回の優勝でその座はますます揺るぎないものになったことでしょう。

 今後はぜひ、本人もたびたび口にする「海外進出」を目指してもらいたいと思います。渡辺直美さん、ピースの綾部祐二さんなど、芸人が海外に出ていく動きはますます活発になっています。英語が得意で、ピアノが弾けて、演技力もあるゆりやんさんは、ワールドクラスのエンターテイナーとして活躍する可能性を秘めています。女芸人の頂点に立った彼女が「世界のゆりやん」になる日も近いかもしれません。

ゆりやんさんの今後の活躍も楽しみです
ゆりやんさんの今後の活躍も楽しみです

文/ラリー遠田 写真/小野さやか

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