“恋バナ収集ユニット”桃山商事のメンバーが、恋愛の悩みに効く1冊を紹介していく新感覚のブックガイド『桃山商事の「恋愛ビブリオセラピー」』!
・彼がいつも忙しくてなかなか会えない
・仕事が繁忙期に入ると、メールの返信もよこさなくなる
・「落ち着いたら旅行にいこう」と何度も言われているが、一度も落ち着いたことがない
・忙しさを理由に家事や子育てに非協力的
この本がなぜ恋愛と関係あるのか
■「いつも時間がない」男性、あなたの近くにもいませんか?
こんにちは。桃山商事の森田です。
今回は、読者のみなさんがおそらく一度は出会ったことのあるタイプの男性について考えていきます。ひょっとしたら、今の彼氏や夫がまさに当てはまる方もいるかもしれません。
それは「いつも時間がない」男性です。
仕事に常に追われていて、なかなか会えないどころかメールの返信さえなくなり、一時的に音信不通になることもしばしば。結婚していても毎日帰りが遅くて、共働きなのに家事や子育てをしない。「ひと段落したら旅行にいこう」と口にはするが、いつまで経っても「ひと段落」する気配がない……こういったタイプの男性です。
■多忙・カードローンの悩み・ダイエットに共通するもの
ここで取り上げる書籍は、行動経済学者のセンディル・ムッライナタンさんと、エルダー・シャフィールさんの著書『いつも「時間がない」あなたに』です。タイトルだけ見ると、いかにもライフハック系の時間管理術の本に見えます。しかし、本書はそれよりもずっと射程範囲の広いテーマを扱っています。
これは「欠乏」についての本です。
本書によると欠乏とは「自分が持っているものが必要と感じるものよりも少ないと感じること」で、言うなれば「足りていない!」という主観的な感覚です。
この感覚はさまざまな問題と直結しています。これから考えていく「忙しい男性」は時間が欠乏していますし、毎月のカードローンの支払いに関する悩みは金銭的な欠乏です。
孤独は人付き合いの欠乏であり、さらに、ダイエットも欠乏と関連があります。ダイエットでは食べる量をいつもより減らさなければならず、それはカロリーの欠乏を意味するからです。また、世界的な貧困も金銭的欠乏の一種と言えます。
このように時間やお金に欠乏を感じている時に、人の心には何が起こるのか。また、それがどのように選択や行動を決定するのかを、著者たちは豊富な研究事例を挙げて論じています。
■欠乏は「処理能力」の低下を招く
欠乏が人の心に及ぼす最大の影響は、「処理能力の低下」を招くことです。処理能力とは「計算する能力、注意を払う能力、賢明な決断をする能力、計画を守る能力、そして誘惑に抗する能力」のことで、人が意識的に行うほとんどの活動に関係します。
欠乏が処理能力を低下させるのは、それが人の心を占拠するからです。
例えば仕事の締め切り間近で切迫している時には、家にいてもついそのことを考えてしまいます。ダイエットしている人は常にカロリーのことで頭がいっぱいですし、お金に困っている人はどうやって今月のカードを支払えばよいかを四六時中考えています。
これは、バックグラウンドで重いプログラムを開いているパソコンに似ています。重いプログラムはパソコンの処理能力を消費して、動作を鈍らせる。同様に欠乏も、人の心のプロセッサーに負荷をかけ続けることによって、目前の事柄に向けられる心を少なくします。
忙しい仕事の合間にアマゾンで衝動的に爆買いしてしまうときには、処理能力が低下していて「賢明な決断」ができなくなっているのです。
次のページでは、欠乏がもたらす具体的な選択や行動についてさらに見ていきます。