“恋バナ収集ユニット”桃山商事の清田代表と森田専務が、恋愛の悩みに効く1冊を紹介していく新感覚のブックガイド『桃山商事の「恋愛ビブリオセラピー」』! 今月は、「セックスレス」をテーマに、森田専務が「伝わるメソッド」を活用した解決のヒントを検証します。

今回のお悩み
・パートナーとのセックスレスに悩んでいる。
・彼が、セックスレスについての話し合いに応じてくれない。
・いつかセックスレスになるのでは……と心配している。
・「性生活はマンネリするもの」となかば諦めている。
そんな悩みに効く1冊
『伝わっているか?』
(著=小西利行/宣伝会議)

なぜこの本が恋愛に関係あるのか?

■楽しく読める「伝え方のメソッド本」

 伊右衛門、ザ・プレミアムモルツ、LEXUS、ロペピクニック、PLAYSTATION……これらは、本書『伝わっているか?』の著者であるコピーライターの小西利行さんが広告を手がけてきた商品やブランドです。

 広告の言葉を考えるコピーライターは、「伝え方のプロ」です。本書は、そのなかでもトップランナーである著者が、これまでに培ったノウハウをまとめた「伝え方のメソッド本」です。具体的なメソッドは20個あるのですが、本書ではそれがただ羅列的に並べられているわけではなく、とあるスナックに集うお客さんたちの悩みを、店に居着いた謎の「イルカ」がメソッドを使って解決していくという、「楽しく学べるエンターテイメント」になっています。

 つまりとても「読みやすい」のですが、これは本書の「伝わるコミュニケーション」というテーマを体現していると言えそうです。

■伝わっているか?

 お客さんたちの悩みを聞く際に、イルカは必ず「伝わっているか?」と問いかけます。書名でもあるこの問いには本書のエッセンスが詰め込まれています。小西さんは前書きで次のように述べています。

なんとかして「伝えよう」と思えば思うほど、うまくいかないのです。(中略)一生懸命考えた結果なのに、逆に怒らせてしまったり、気持ちが間違って伝わったりしてしまう。(中略)「伝える」ことばかり考えると、結局、相手のことを考えず、自分の意思を押し通すエゴになってしまうからです。

 このためコミュニケーションにおいては、発想を「伝える」から「伝わる」に転換することが重要になると小西さんは言います。「伝わっているか?」という問いかけは、そのことを確認するためのキーセンテンスなのです。

■「伝える」と「伝わる」の違い

 「伝える」と「伝わる」は似ているようでまったく異なります。「伝える」は自分の言いたいことを一方的に押し付ける、いわば街頭演説みたいなものであり、極論を言えば一人でもできます。

 一方の「伝わる」とは、小西さんによると「相手が興味をもち、気持ちよく聞いてくれて、心が動く」ことなので、相手がいなければ成立しません。また、「心が動く」ために大切なのは「共感」であり、相手が共感する言葉を探すためには「相手が望んでいるコトと、あなたが伝えたいコトが重なる共感ポイント」を見つける必要があるといいます。

 こう書くと、なんだか情緒的な精神論のように聞こえるかもしれません。しかし先にも書きましたが、本書は「メソッド本」です。小西さんは「コミュニケーションはセンスではなく、技術です」ときっぱり言い切っています。本書にある20の「伝わるメソッド」を使えば、誰でも「大切な気持ちが相手に伝わるように」なるのです。

■恋愛でも技術が大切!?

 このコラムのメインテーマである「恋愛」においては、コミュニケーションが大切です。このことに異論がある人はあまりいないと思います。さらに、小西さんが言うように「コミュニケーションは技術」なのだとすると、「恋愛では技術が大切」ということになります。

 ……こうなると異論が出てきそうな気がします。なぜなら「恋愛は技術とかそういうんじゃなくて、『気持ち』でしょ!」という固定観念が根強いように思うからです。また、「恋愛と技術」というと、「モテテク」や「口説き方」みたいな方向に話が行きがちです。

 前提として押さえておきたいのは、相手に伝えたい自分の気持ちがまずある、ということです。そして、それを相手に「伝わる」ようにするための技術がある。ここがポイントです。心にもないことを言って相手を騙してやろうとか、うまく動かしてやろうとか、そういう“技術”の話をしたいわけではありません。

 「伝わる技術」を軽視すると、恋愛においても「なんとかして『伝えよう』と思えば思うほど、うまくいかない」事態に陥ります。しかしこれは裏を返せば、「恋愛で起こる問題の多くは、『伝わる技術』で解決可能である」ということです。そこで次のページからは、恋愛で発生する1つの問題を取り上げ、「伝わる技術(メソッド)」を実際に活用して「解決方法」を考えていきたいと思います。

 取り上げるのは、「セックスレス」の問題です。