“恋バナ収集ユニット”桃山商事のメンバーが、恋愛の悩みに効く1冊を紹介していく新感覚のブックガイド『桃山商事の「恋愛ビブリオセラピー」』!

今回のお悩み
・彼が約束の時間に遅刻しがちだが、いつも仕事を言い訳にされ、「仕方ない」と思いつつもモヤモヤする。
・揉め事になるとすぐに謝って「まるくおさめよう」とする彼の態度に余計腹が立ち、ケンカがさらにヒートアップしてしまう。
・悪いことをしたと思っても、いつもうまく謝れない。
そんな悩みに効く1冊
『失敗しない謝り方』
(著=大渕憲一/CCCメディアハウス)

なぜこの本が恋愛に関係あるのか?

謝罪に“失敗”した森会長

 少し前の話になりますが、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、頭を丸刈りにしたというニュースが流れました。この丸刈りには、新国立競技場計画見直しやエンブレム問題など、次々に起こる不手際への反省の意味が込められているようでしたが、森会長は報道陣に向けて、次のように憮然と話したそうです。

「みんなが責任取れとか何とか言うから、いっぺん坊主にしたほうが楽だから。それだけ」

 髪型とは裏腹に、この言葉からは反省の色がまったく見られません。これでは国民をもっと怒らせるだけであり、「謝罪の表明」としては明らかに失敗しています(というか、本人には反省の気持ちも謝るつもりもそもそもないのでしょう。じゃあ丸刈りなんてしなけりゃいいのに……)。この例ほど極端なものは珍しいですが、企業や著名人が、不祥事を起こして謝罪会見したのに、謝罪に失敗して火に油を注ぐことはよくあります。

謝ることは難しい!?

 今回取り上げる『失敗しない謝り方』という書籍では、社会心理学者である大渕憲一さんが、謝罪についてわかりやすく掘り下げたうえで、「マイナスの事態を悪化させずに収束させるにはどうすればいいのか、あるいは、会社で自分の評価を上げたり、周囲と上手に付き合ったりするにはどうすればいいのか」を解説しています。

 恋愛や夫婦生活においても、「マイナスの事態」をつくってしまい、謝罪しなければいけないという状況は誰の身にも起こり得ます。また逆に謝られる側になることもあるでしょうし、謝ろうとしないパートナーにイライラする、といったこともあるかもしれません。

 本書を読むと、ひとくちに謝罪と言っても、そこに込められる意図や意味は状況によってさまざまで、実はとても微妙で複雑な行為であることがわかります。謝罪についてきちんと理解していれば、自分がトラブルを引き起こした時に失敗せずに謝ることができるようになりますし、謝る相手や謝らない相手を理解することも可能になるように思います。

謝罪とは何か

 本書によると、謝罪とは「釈明行為」の一種です。釈明行為というのは、簡単に言うと、「何か失敗をしてしまった時にその事情を説明すること」であり、大きく分けて下の4つがあります。

(1)謝罪…自分の非を認めて、謝ること。

(2)否認…自分は関与していないと主張すること。

(3)正当化…(関与はしたが)自分は間違ったことをしていないと主張すること。

(4)弁解…責任を他に転嫁することで、やむを得ない事情があったと申し開きすること。

 私たちはこの4つの釈明を普段から何気なく使い分けていますが、時に使い方を誤って、釈明する前よりも悪い状況になることがあります(「謝罪」の象徴とも言える丸刈りにしておいて、結局は「否認」を口にした森会長の例はその典型でしょう)。そこで次のページでは、恋愛における謝罪の失敗例をもとに、謝罪についてもう少し掘り下げていきます。