世田谷美術館について

 1986年3月30日に開館した世田谷美術館は、緑豊かな砧公園の一角に位置します。恵まれた自然環境を存分に生かした建築は、内井昭蔵の設計によるもの。自然と調和したデザインが、ゆったりと作品を鑑賞する空間を演出してくれます。

 世田谷区という、他の地域に類を見ないほど芸術家が多く在住する特殊性をいかし、在住作家の作品調査や研究、収集活動を通じ、それらの作品を展覧会などで紹介しています。また、実技の講座やワークショップなどを定期的に開催し、日常生活と芸術をつなぐ場を提供しています。

 所蔵コレクションは、近現代の作品を中心に、日本国内はもちろん、海外の作品など合わせてこれまで約15,000点にのぼります。なかでも、パリ市の税関の職員だったアンリ・ルソーや、イタリアの靴職人のオルネオーレ・メテルリなど、素朴派など国内外の近現代の作品や、世田谷区ゆかりの作家の作品はコレクションの大きな柱です。画家、陶芸家、書道家、美食家など様々な顔を持つ北大路魯山人の作品も、当館の主要なコレクションとなっています。

「生誕100年 写真家・濱谷浩―もし写真に言葉があるとしたら」
 1階展示室・11月15日まで

 15歳から写真を撮り始め、1956年に雪国の風土と人を撮影した初の写真集「雪国」を刊行、1960年には、アジア人で初めて国際的な写真家集団「マグナム・フォト」の寄稿写真家となった濱谷浩。世田谷美術館では、彼の生誕100年を記念した展覧会を開催中です。

 本展は、濱谷の活動前半期にあたる1930年代から60年代の仕事に注目。1930年代の銀座をスナップした初期作品や、豪雪地方に暮らす人々を捉えたシリーズ、1960年代の安保闘争を取材した「怒りと悲しみの記録」、開高健や川端康成など、昭和の作家や美術家のポートレートを含む全5章で構成されています。

 のちにグローバルな活動を展開することとなる濱谷浩が、いかにしてその信念と姿勢を確立していったのか、その揺るぎない足跡を辿ります。

Information
世田谷美術館
URL/http://www.setagayaartmuseum.or.jp/
開館時間/10:00~18:00
※展覧会入場は閉館30分前まで
休館日/月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始

文・写真/黒田隆憲