◆2016年春夏ファッション注目の「アフリカン」スタイル
(C) 2014 MANDARIN CINEMA - EUROPACORP - ORANGE STUDIO - ARTE FRANCE CINEMA - SCOPE PICTURES / CAROLE BETHUEL
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 晩年のイヴはパリを離れ、アフリカのマラケシュ(モロッコ)で過ごすことが多かった。彼はアフリカの文化を愛し、作品にも進んで取り入れた。ハンティングジャケットに象徴される「サファリルック」でも知られるが、これからの時期に迎えたいのは、パワーや楽観を印象づけるトライバル(エスニック)なアフリカンテイストだ。アフリカならではのダイナミックな色使いやプリミティブな模様・柄は装いにエナジーを注ぎ込む。地味色が増えて、重たく見えがちになる冬にこそ、アフリカンテイストは生かしがいがある。2016年春夏向けにもアフリカンは多くのブランドから提案されているので、早めに手なずけておきたい。

 この映画で興味深かったのは、イヴが複数のテイストを組み合わせる「ミックスコーディネート」を支持していたと見える描写だ。蚤の市で見つけた品や、家族の「おさがり」を取り入れた着こなしを気に入る場面もあった。日本でもヴィンテージ人気に弾みがつきつつある。これまで一般的だった「古着」にとどまらない、年代物や上質ブランドの、時を超えたアイテムを、タイムレスな風情づくりに生かす人が増えてきた。

(C) 2014 MANDARIN CINEMA - EUROPACORP - ORANGE STUDIO - ARTE FRANCE CINEMA - SCOPE PICTURES / CAROLE BETHUEL
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 映画『サンローラン』を見て分かるのは、ファッションが持つバリエーションの豊かさだ。イヴという1人の天才がこれほど多様な着姿を提案したことにあらためて驚かされると同時に、自分はまだまだ試していないテイストや着こなし、アイテムが少なくないことにも気づかされる。ある程度の大人になってくると、段々と着る服のムードが偏って、一種の「スタイル」になっていくが、意識して選び取った「理想型」ではなく、消去法的に固まっていった「無難型」であるケースも珍しくない。あまり早くから「落とし所」に安住してしまわないで、たまには冒険やチャレンジもしてみたほうが新たな発見につながる。

 新たな流行に飛びつくだけではなく、自分の中に新しさを見いだす情熱も失いたくないものだ。誰の真似をすることもなく、自らの内面を見詰めることによってモードを書き換え続けたイヴの生涯はその大切さを教えてくれる。

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映画『サンローラン』
12月4日(金)TOHO シネマズシャンテほか 全国順次ロードショー
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(文/宮田理江)