相談者:先生が言っていた意味がよくわかりました。昨日の買い物って、AIDMAでいうところの「Action」に到達するまでの他のプロセスを飛ばしてしまっていたんですね。

チエ先生:そうね。それに店員さんの働きかけがなかったら、「Desire」が高まらなかったんじゃないかしら?

相談者:確かにそうですね。もしあの時店員さんが来なかったら、多少欲しくなっていてもガマンしていたと思います。じゃあ、スイーツの行列に思わず並んじゃうとか、店員さんにプッシュされたわけじゃないのに、自分で動いちゃう場合はどうすれば……。

チエ先生:行列に並ぶのはどうして? その都度、自分に問いかけてごらんなさい。「みんなが並んでいるから」って思うかもしれないけど、それって自分への言い訳に過ぎないの。明快な答えが導き出せないならやめておくべきね。

相談者:なるほどー。そういえば、昨日もレジでお金を支払う時、ちょっとだけ迷いが出たんです。買っちゃっていいのかなって。でも、あっても困らないものだし、もうすぐお給料日だし、ま、いっか!って、言い訳しちゃってました。振り返ってみると、私、そんな言い訳を重ねて、衝動買いをたくさんしてきたような……。

チエ先生:そんなに落ち込むことないわよ。大事なのは、同じ失敗を繰り返さないこと。あなたは買い物の失敗を防ぐノウハウを学んだのだから、次はそれを生かすことを考えて。

相談者:失敗は成功のもと、ですもんね。今度、お店やネットで買い物をする時は、AIDMA、AISASを呪文のように心で唱えることにします。私、もう店員さんのセールストークに耳を貸したりしませんから!

チエ先生:まぁまぁ、そんなにムキにならずに(笑)。洋服なら素材やお手入れの仕方など、店員さんに聞いてみないとわからないこともあるから、服選びのパートナーとして上手に付き合えばいいの。

行動を急がずに、自分に問いかけてみることが大事

 その場では納得して買ったつもりが、あとでもっとコストパフォーマンスのよいものが見つかったり、そもそも必要ではなかったことに気づいたりして後悔しがちな衝動買い。何度も繰り返してしまう人は、AIDMAやAISASの購買行動プロセスをたどった買い物だったのかどうか、確認してみましょう。

 衝動買いでは、Attention(注目)からDesire(欲求)またはSearch(検索)までの時間が極端に短く、十分な比較検討を試みずにAction(行動)へとなだれのように進んでいく傾向があります。その原因は、店員さんのセールストークなど外的なものだけとは限りません。その場しのぎの言い訳で自分自身にGOサインを出していませんか?

 心のメカニズムを理解し、観察することが、衝動買いをしそうな時のブレーキになります。とっさの言い訳を差し挟まずに、本当に納得のできる買い物かどうか、自分の心に問いかけてみましょう。

 AIDMA、AISASは本来、広告宣伝等のビジネスで活用されるプロセスモデルですが、これは私たちが賢い消費者になるための指針でもあるのです。衝動買いによるムダを抑えて、有効なお金の使い道を見つけてくださいね。

監修者:村尾佳子

グロービス経営大学院・マナビプラスの記事を転載