相談者:確かに「いい人」っていろんな解釈の仕方がありますね。具体的な言葉に置き換えなくてもある程度伝われば、そのうち理想的な人に出会えると思っていたフシがあります。

チエ先生:じゃあ、仕事に置き換えて考えてみて。今のマナミさんの仕事で、そういうビッグワードが通用するかな。たとえば、人事のお仕事で「いい人」を募集することがある?

相談者:まさか~、「いい人」なんて曖昧なリクエストするわけないじゃないですか。経歴とかスキルとかある程度の基準を設けて、実際にお会いして、仕事に対する考え方やキャリアプランを聞いた上で、うちの会社に適している人かどうかを……。あっ、パートナー選びも同じこと。そう言いたかったんですね、先生。

チエ先生:ちゃんとわかってくれたみたいね。人って身近すぎることについては、わかっている気になって言葉が不足しがちなの。だから、まずは自分のなかで考えを整理して、「私はこういう人を求めています」ということを具体的に示さなきゃ。

相談者:そうですよね。やさしいっていう私のリクエストも、当てはまる人はたくさんいそうだけど、その条件を満たせば誰でもいいってわけでもないと思います。この機会に自分のなかのイメージを一旦クリアにして、どういう人がいいのか、もう一度考え直して、それを周りの人にもわかるように伝えないといけませんね。

チエ先生:それがいいと思うわ。プライベートのことも、ビジネスのことも、自分の思いをきちんと説明してみることで、新たな発見があるかもしれないわよ。

相談者:はい! ちゃんと説明して、今度こそ私にぴったりな人を探してもらいます! そして、会ったあとも見た目や直感だけで決めつけず、相手のお話を聞いて、自分の価値観に合う人かどうかをしっかりと見極めます!

チエ先生:その調子ならきっといい人が見つかるわよ。あっ、私までいい人って言っちゃった(笑)。

いつのまにか、無意識に使っていることも

 今回のマナミさんのパートナー探しで出てきた「いい人」のような、「非常に抽象的で、いろいろな解釈を生んでしまう言葉(ビッグワード)」は、日常のいろいろなシーンで何気なく使われています。「いい感じのお店知らない?」「早めに提出します」「持ち帰って検討します」「私的にはこちらのほうが……」などなど、枚挙に暇がありません。

 こうしたビッグワードのすべてが不適切なわけではなく、幅のある言葉をあえて投げかけてみて、相手の認識度合いを確かめたり、具現化のトレーニングをしたりするという有効な使い道もあります。

 ただ、ほとんどの場合が理解不足や希望的観測から具体化を避けているだけで、誤解や勘違いの連鎖を起こしてしまう危険性をはらんでいます。気心知れた相手との日常会話ならそれほど支障はないかもしれませんが、大事な話をするときや、誤解が生じてはならないビジネスのシーンでは、安易にビッグワードを使わないように気をつけてくださいね。

監修者:西口敦

グロービス経営大学院・マナビプラスの記事を転載