ガーナの人々がハッピーになれるビジネスを根づかせたい!

 仕事は、JICAボランティアの前任者が始めたオレンジなどの食品加工・販売を引き継ぎ、ビジネスの仕組みをつくること。現地の女性グループを組織して本格的に活動を始めようとして、彼女は一つの壁に直面したという。

 「水曜の9時からオレンジジャムづくりを始めよう。そう約束したものの、当日、来た人は1人だけ。ほかの人は『旅に行っていた』『具合が悪い』『葬式に行かないと』……。正直、最初はカチンときました。でも、ここは日本ではなく、時間の感覚も働く意識も、生活のなかの優先順位も何もかもが違います。むしろ、違っていてあたり前なんです。そう考えると気が楽になり、少しずつ私のやり方に賛同してくれる人も増えていきました。こちらの考えを押しつけるのではなく、彼女たちの習慣や価値観を理解し、私を受け入れてもらえなければ何も始まらないと痛感しました」

 現地のベーカリーの協力を得てジャムパンを焼き、市場で販売すると、これが大好評。一緒に販売を行う女性たちも現れ、ものを売り、その対価としてお金を得る喜びを知ると、俄然やる気になっていったそう。コストや販売方法など問題も山積みだが、一歩踏み出した手応えを山口さんは感じている。

 「ボランティア=援助ではなく、本当に求められているのは自立支援だと思います。食品を加工してジャムやジュースをつくるだけでなく、販売して利益を得るまでの仕組みをつくり、ボランティアがいなくなっても自分たちで運営できるようにする。つくる人も、売る人も、買う人も、みんながハッピーになれるビジネスを根づかせたい。私のやっていることが、少しでも役に立てばうれしいですね」

 任期を終えて帰国したら、「どういう形になるかはまだ想像できませんが、ここでの経験を会社の成長、そして自分のキャリアに反映させたい」と語る山口さん。未来を夢見ながら、ガーナでの奮闘は現在進行形だ。

若者にとって素晴らしい制度
たくましく成長してほしい

 当社は自動車関連の部品を中心に海外へ輸出しており、約80カ国に提携先があります。以前からグローバルに活躍できる人材育成の必要性を痛感し、社員を短期留学させる制度もあります。ただ、1週間から10日間では時間が短すぎる。かといって、長期で派遣するほどの余力はありません。そんな意味で、JICAの「民間連携ボランティア制度」は、当社のような中小企業には最適の仕組みだと思います。

 メリットは、会社に籍を置いたまま、つまり将来の不安を払拭して、若い社員たちがやりたいことにチャレンジできるところです。当社の山口は入社前から「アフリカに行きたい」という夢があったため、会社としても後押ししてあげたかった。自動車リサイクル事業は、開発途上国のこれからになくてはならない事業であり、日本が経験したことを開発途上国に伝え、少しでも環境負荷を抑える役目を私たちは担っています。山口にはガーナでいろいろ経験し、見聞を深め、たくましく成長して帰ってきてほしいですね。

協力/JICA(国際協力機構)