自分にとっての「ウーマノミクス」とは

 審議員会副議長就任後、経団連役員として参加したある日米のビジネスミーティングでは、日本側の女性は彼女1人だったのに対し、米国側には20、30%の女性エグゼクティブが並んでいたと言います。そして、アメリカの女性エグゼクティブたちは、「ようやく日本にも重要なポジションに就く女性が出てきた」と次々に話しかけてくれ、ネットワークが広がったそうです。「国を超え⼥性たちの経済外交が始まる予感がします。日本もこれに加わらないといけない」と吉田さんは指摘します。

 「『世界の消費者マーケットは18.4兆ドルある。その中で女性が決定権を持つマーケットは12兆ドルだ』と指摘するのは、米オバマ政権の女性商務長官であるペニー・プリツカー氏。もし、企業が消費者マーケットに真剣に取り組もうとするなら、女性を経営陣に入れないのはおかしいというのが彼女の持論。少子化が進み、将来に向けた労働力の減少が懸念される中、日本でも女性の登用は非常に重要な課題です。また、こうした大きな変革の時こそ、単に『世の中の流れだから』などといったことではなく、日本人一人ひとりが、なぜ今これをしないといけないのかを理解し、心から信じて変⾰を起こすことが⼤切」――こう吉田さんは説きます。

 例えば、吉田さん自身の「ウーマノミクス」(女性が牽引する経済のあり方)は、「自分の苦い経験から娘の時代には、 “仕事か家庭か”ではなく、皆が自分の生き方を選べる時代にしなくてはいけない」という思いなのだと言います。

 「タンポポが硬いアスファルトを突き破り花を咲かせているような風景を見たことがあると思います。ロジカルに考えるとあり得ないことです。でも、これは生命のDNAに組み込まれた、進化したい、生きたい、自分を咲かせたいというとても強いパワーなのです。ですから、外部の期待や時代の流れに沿うためではなく、本来の自分を⾒つけその生を全うすることが激し時代にこそ求められる一番力強い、何にも負けない生き方なのだと思います」

取材・文/大塚千春