何人、いつまでに欲しいか~達成したい「具体的な」目標は?

 「“グローバルな人材の育成を強化したい”という会社があったとすれば、まず必要になるのは“グローバルな人材”とは具体的にどういう人材であるかという定義をすること。新規事業を海外で立ち上げることができる人なのか、単に駐在員を増やしたいのか、育成を目指す理由を含めて具体的に定義する必要があります。また、そうした人材をいつまでに何人欲しいのかといった時間軸も明確にしなくてはいけない。例えば、2年で100人欲しいのか、4、5人でいいのかで、対策は大きく異なってくるからです」(佐々木さん)。

 ジョン・F・ケネディ米大統領は1962年、アメリカの宇宙開発事業に関する有名なスピーチを行いましたが、その中で「1960年代末までに人類を月に立たせ安全に帰還させる」という、とても簡潔で具体的で、時間軸も明確で、かつドラマティックな目標を力強く語りました。

 「誰が聞いてもそれが達成できた時の“映像”が浮かぶ。期限もはっきりしているため、実現するための方策が決まっていなくても、それぞれの科学者や技術者がその実現に向けて何をすればいいのかが、はっきり分かり、自走できるのです」(佐々木さん)。

 一方、課題に対してその対策を考える時に陥りがちなのは、その課題の本質にたどり着かないまま、表層的な打ち手を打ってしまうことだと佐々木さんは言います。

 例えば、ある営業職の人の成績が他の人より悪かったとしたら、改善のためにはその本質的な理由はどこにあるのかを徹底的に分析しなくてはいけない。「その人が仕事をさぼっているのか、さぼっていないのだとしたらどこが問題なのか。お客さんの選び方の問題か、提案しているのが低額商品ばかりなのか、仕事の時間配分に問題があるのかなどと、何段階にも深堀りをして、問題の本質を見極める必要がある。深堀りをすれば、本人ではなく、マネージメント側に問題がある場合だってあります」(佐々木さん)。

 細かく理由を分析していく作業は大変ですが、「これを、意識するだけでも違います」と言う佐々木さん。クリティカルシンキングの力を付けるためには、「紙と鉛筆を使って、ひたすら思考力の“筋トレ”をすること」とアドバイス。まずは1つ目標を決め、思考するトレーニングに取り組んでみるといいでしょう。

取材・文/大塚千春