人生のフィールドは“地球”が当たり前

太田――僕はバックパック旅行で世界50カ国をまわっている間、昼間の暇な時間に現地の大学生を見つけて、あれこれ話しかけていました。そうするとたいていの国で、僕が突然話しかけても普通に英語で会話をしてくれる。日本の大学生が急に外国人に話しかけたらびっくりして、逃げてしまうかもしれないけれど。

青木――日本以外の国では、大学卒の人は英語を話せるというのがスタンダードですよね。

太田――そうですね。それで、あるアジアの新興国の大学生たちと就職やキャリアについて話していて驚いたことがありました。「どこで働きたい?」という質問に対して、企業名とか◯◯業界という答えが返ってくるかと思ったら、「ロンドンで働くか、シンガポールにしようか迷っている」なんて平然と言ってくる。

 彼らの人生のフィールドはすでに世界に広がっていて、決してそれが特別なことじゃなかったんです。

青木――日本人の大学生には、まだそういう人は少ないでしょうね。

太田――彼らに比べたら、国内の有名企業とか業界第1位の企業にこだわっている日本の学生は、江戸時代の人間のようなものですよ。江戸にすべての可能性が集まっていると信じて、僕みたいな伊達藩(宮城県)の人間も必死に江戸を目指して……みたいな。

青木――(笑)。時代が300~400年遅れてる。

太田――今は飛行機でどこへでも行けるし、インターネットの普及で情報も得やすい。SNSで人とつながるのだって簡単。それなのに海外に出ないなんて本当に「もったいない」と痛感しました。だってその後の人生の可能性の広がり方が、まったく違うはずですから。

青木――もう「英語が苦手だから」なんて言い訳している場合じゃないでしょう。中学レベルの英語の知識があれば、絶対に海外で通じる英語を話せるようになるというのが私の持論です。ぜひ英語コンプレックスを克服して、もっと日本から海外に出る若者が増えてほしいですね。

グローバル化は「個人」から始まる

太田――僕は、約2年間のバックパックの旅で、合計300人くらいの海外で働く日本人と会ってきました。彼らは「江戸時代の日本人」ではなくて、すでに自分の能力を世界で発揮している人たちでしたが、まだそういう日本人は少ない。でもきっとこれから、新しいロールモデルになるような、世界を舞台に活躍する日本人が次々登場する気がしてます。

青木――そう思います。世界を見渡してみると、シンガポールで働くスイス人や、スウェーデンにいるアメリカ人、インドで出会ったイギリス人が今は日本で働いているとか、そういう状況が特別ではなくなっていますよね。グローバル化はどんどん進んでいる。

太田――そう。でも日本では、グローバル化というと、「グローバル化に乗り遅れるとやばいぞ!」とか、「グローバルな人材になれ!」「英語を身につけろ!」というふうに、脅すようなセリフをぶつけられるだけ。企業や組織の文脈でしかグローバル化が語られないので、個人にとってそれがどういう意味を持つのか、さっぱりわからないんです。

 でも本当は、グローバル化って個人の人生の可能性を、思い切り広げてくれるものですよね。

青木――まったく同感です。これからは日本も、海外へ飛び出していく「個」の力が、もっと注目されるはずだし、ぜひそうなってほしい。