「あの上司とは折が合わない」「あの部下はいつも何考えているんだか…」

 職場で人間関係に悩んだことはありませんか? 価値観や環境が異なる人が同じ職場で働いていると相手の気持ちになって考えるというのはなかなか難しいもの。そんなときに心強いのがエニアグラムという性格分析。

 生まれ持つ気質をベースに9つの分類で自分や周りの人の傾向を的確に理解できるのです。この連載では、エニアグラムを使って、自分だけでなく、周囲の可能性も最大限に活かす方法をお伝えしていきます。(有限会社シープラスエフ研究所取締役・高岡よし子さんに教えていただきました)

 リーダーになると、自分の業務のことだけでなく、部下やチームのポテンシャルを高め、成果を上げることが求められます。そのためには、自分自身のことに加え、ひとりひとりの部下についてよく理解し、どうしたらいい関係をつくり、可能性を引き出すような関わり方ができるのかを知っておく必要があります。

 今回ご紹介するエニアグラムは、そのための心強い味方。代表的な性格分析のひとつとして、世界的に高い評価を受けています。生まれもつ気質をベースとした9つの性格分類により、自分や部下の傾向性について、迅速かつ的確に理解することが可能です。それぞれが本来、才能や資質としてもっている輝きに加え、世界観、動機、思考・感情・行動のパターン、陥りやすい問題、仕事やコミュニケーションのスタイルなどについて詳しく知ることができます。そして分析するだけでなく、どのように長所を伸ばし、短所を補い、可能性を引き出すことができるかを具体的に教えてくれるのです。

「期待しているから」で頑張れる人もいれば、プレッシャーになる人も

 同じ言葉を使っても、相手の性格によって受け取り方が異なる場合があるということをご存じでしょうか。たとえば部下に対し、「期待しているからね」という言葉をかけたとしましょう。そう言われて、やる気が出る人もいますし、いわれなくてもベストを尽くすと思う人もいます。逆に、「この人は自分に何をどこまで期待しているのだろう」、「自分のことを本当に分かって言っているのだろうか」など、疑心暗鬼になり、かえってプレッシャーに感じる人もいます。曖昧にいわれるよりも、明確な方向性や責任の範囲を示された方が、力をフルに発揮できるのです。

 それでは、エニアグラムを具体的に仕事に役立てた例を挙げましょう。あるタイプ6の女性(信頼を求める人)は、ちょうど課長に昇進した頃、エニアグラムを学び始めたことが役に立ったと話してくれました。

 課長になったばかりの時、リーダーというのはタイプ3(達成する人)的なイメージがあり、「合理的でクール。みんなより優れた存在として、テキパキと状況把握し、的確な指示を出さなければ」と思っていたそうです。しばらくはそのようにふるまってみましたが、部下との距離を感じる日々。自分らしいのは、自分が大変な状況であれば、それも伝えつつ、部下を巻き込んで手伝ってもらう形で仕事を達成していくことだと気づき、うまくいくようになったとのことです。リーダーシップには、さまざまなスタイルがあり、自分らしさを活かすことが大切です。

 また、彼女は、部下のタイプを知ったことでうまく対応できたケースについても話してくれました。その部下も自分と同じタイプで、有能でしたが、気分の浮き沈みがある人でした。それは性格からきているということを踏まえた上で、あまりそのことに左右されず、安定感をもって関わっていくことで、部下はとても成長し、活躍してくれたそうです。「部下に対する信頼感をもつことで、上司に対する信頼感をもってくれる。そういう信頼の循環を感じることができ、部下の才能をつぶさずに済んでよかった」と語ってくれました。

まずは、タイプ診断簡易テスト

 それでは、下記のタイプ診断テストを使って、自分のタイプ診断を行ってみましょう。診断結果が出たら、タイプ説明を読んで、当てはまるかどうかを確認していただければと思います。

 次の質問群I、IIそれぞれについて、3通りの文章のうち、これまでの自分を振り返って、最も自分に当てはまると思うものを直感的に1つ選んで下さい。

<注意点>
・すべての内容に合意できなくても、他の2つの文章よりも自分に当てはまると思えるものを直感的に選択して下さい。
・自己イメージ(こうなりたい自分)ではなく、これまでの人生の大半において実際にそうだった、そして仕事上の役割だけでなく、プライベートでも当てはまると思える傾向をお答えください。
・どの文章にも当てはまるかもしれないような、例外的な状況は考えないでください。
・疲れている時など、通常の状態ではない時に回答するのを避けましょう。

[質問I]

A.通常、自分が欲しいものは必ずゲットするという意識をもっている。

B.周りに気を遣い、折り合いをつけようとする。こうあるべきという意識が強い。

C.自分の世界をもっていて、人に対しては、一定の距離を置きながら関わりがち。

[質問II]

D.根拠はなくても、ものごとは結局なんとかなると思っている。反面、嫌なことにフタをする傾向がある。

E.冷静で合理的。気持ちをあまり表現せず、クールに見られることもある。

F.何かあると、すぐ気持ちが反応する。相手が本音をいってくれないと、納得できない。

 それでは、タイプ診断結果を確認してください (結果は次ページ)