離婚しても親の姓に戻れない「落とし穴」

 その一例が「離婚復氏」の問題です。これまで見てきたように民法750条により、結婚の際には夫または妻のどちらかの姓を選ばなくてはいけませんよね。結婚して姓を変更した人は、離婚すると旧姓に戻りますが、これを「復氏(ふくし)」と呼びます。 結婚時の姓を離婚後もそのまま名乗っていきたい場合は、届け出を出せば可能です。これを「婚氏続称制度」と呼びます。

 ところがここに「2回離婚した人は場合によっては親の姓に簡単には戻れない」という落とし穴があるのです。結婚で夫の姓になり、離婚時に旧姓に戻らず、夫の姓を継続した場合は、再婚して離婚した場合は、一つ前の夫の姓に戻り、旧姓(親の姓)には戻れません。

 例えば佐藤姓の女性が結婚して夫の鈴木姓を名乗るようになり、離婚するときに子どもの名前が変わることを避けるなどの理由で「婚氏続称制度」を使って鈴木姓のままでいたとします。その後、再婚して木村姓になって離婚したとします。そうすると、選べる姓は現在の姓の木村か、前回の姓の鈴木で、最初の姓である佐藤姓には戻れないのです。1回目の離婚時に旧姓に戻っていれば、再婚して離婚した時には、親の姓である旧姓に戻れますが、姓を変更するのはほぼ女性です。大多数の男性は姓が変わらないため、何度結婚しようが影響はありません。そして2回離婚する人はそう多くはないために、夫婦同姓制度などに比べて注目されることが少ないのですが、こんな問題点も民法には隠れているのです。

男女で結婚可能な年齢に差があることへの違和感

 また、「男は18歳に、女は16歳にならなければ結婚をすることができない」という民法731条も看過することはできません。男女で結婚可能な年齢に差があることに対する、納得できる理由が見当たらないからです。

 そもそも、ほとんどの都道府県では条例で18歳未満の者との「みだらな性交等」を禁じています。それなのに結婚は16歳でできるって、不思議ですよね。自民党の女性活躍推進本部が今年6月、児童婚(虐待の一種なのです)を防止しようとする国際的な流れを受けて日本でも女性が結婚できる年齢を16歳から18歳に引き上げ、男女差を解消するように提言をまとめる動きもありました。

 来夏の国政選挙から選挙権年齢が現在の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられることが決まりましたが、その流れを受けて議論されている「18歳成人」には私は賛成です。女性の結婚可能年齢も、男性と同じ「18歳」に変更するべきでしょう。

 民法について色々と語ってきましたが、「夫婦別姓制度」と「女性の再婚禁止期間を定めた規定」については12月16日までに大法廷の憲法判断が下される見通しです。これからの女性や家族の在り方に影響する判決となりますので、ぜひ注目してみてください。

取材・執筆協力/吉田明乎