2015年はあなたにとってどんな年でしたか? 女性のキャリアに関するさまざまなニュースが飛び交い、議論が巻き起こりました。末永く働き続けたい私たちに、明るい未来はあるのか、山積した問題はどこから解決していけばいいのか――健康社会学者の河合薫さんに今年を振り返っていただき、問題提起をしていただきました。

 「女部下はめんどくさいんです。“子供できました”って言われると、ああ、またかって。もう、勘弁してよ、って感じです。私の部署には次々と女性社員が送り込まれるんですが、彼女たちが入れ替わりで産休だの育休だのに入る。常に誰かがいない状態で。5人のうち産休、育休、時短とそれぞれ一人ずついます。一体いつになったらフルメンバーで仕事ができるのかと絶望的な気持ちになります。ホント、めんどくさい。どこが少子化なのか? ちっとも分かりません」

 “女性初の部長“だった彼女は、ため息混じりにこう漏らした。なぜ、自分にばかり女性社員を押し付けるのか? 「女は女でよろしく!」とばかりに責任を放棄する“オジさん”たちにも、次々と産休・育休に入る部下たちにも、ぶつけようのない憤りを感じていたのです。

 実はこれ。今から6年前の出来事。現場ではワーキングマザーは珍しい存在ではなくなり、オジさんたちはその“扱い”にちょっとばかり手をこまねいていた時代です。

 もし、件の発言が、今の時代だったら……。

 「許せない!」「ふざけるな!」「ひどすぎる!」「信じられない!」などなど非難ごうごう、彼女は集中砲火を浴びたかもしれませんね。

 「だから女性管理職が増えないんだよ」
 「だから少子化が進んじゃうんだよ」
 「女なんだから、女の部下のこと守れよ!」
 「女の敵は女!完全に、マタハラだな!」

 といった具合に、女性上司は、女性部下イジメをする“マタハラ”上司とレッテルをはられるのです。

 マタハラ――。今年は、「マタハラ」に始まり、「マタハラ」に終わった1年でした。

 昨年11月に、妊娠をきっかけに降格されたのは違法として、いわゆるマタニティ・ハラスメント(マタハラ)が最高裁で認められたことで、一気に“マタハラ”という言葉に社会的関心が高まりました。
 
 つい先月には、厚労省が国として、初の「マタハラ調査」を行った結果を公表し、メデイアでも大きく取り上げられました。

 そこで報道陣が食いついたのが、“女性上司”です。