「星」を10年連続獲得、そして勲章

 地元食材を積極的に用いた松嶋の斬新な料理は、間もなく評判を呼んだ。「Kei’s Passion」はオープンから3年ほどが経過した頃には、高い評価を得るようになっていた。

 そして料理を目指す人なら一度は夢見る、ミシュランという「星」を取った。2006年、外国人としては最年少の28歳という若さだった。

 ミシュランの星は、調査員がお忍びで店にやってきて採点をする。決して試験日などが設定されているわけではない。つまり、その店の「日常」を厳しい基準で“勝手に”採点され、あとで調査員が正体を明かし、ミシュラン・ガイドに掲載する旨を報告される格好だ。

 ただし、そのような“勝手な”評価と信頼性は高く、星を獲得することは1つのステイタスになっている。

 松嶋はその星を10年、連続して獲得してきた。松嶋は「それこそ高校生の時サッカー部で学んだ『夢、計画、実行』です(笑)」と語る。

 また松嶋は、修行中に12カ所のレストランで働いた経験が活きたと振り返る。「星付きレストランを何軒も経験しているから、どういうメニューやサービスを用意すれば星を獲ることができるかがわかっていました」。

 ミシュランの星だけではない。松嶋は2010年7月にフランス芸術文化勲章「シュバリエ」を受勲する。フランス政府より日本人に初めて贈られた勲章で、もちろん最年少での受勲だった。

 受勲式には、日本人男性にとってのタキシードである紋付き袴(はかま)で出席した。

 「最初、僕にあげちゃっていいのかなと思いました(笑)。だけど、もらった後には、やっぱり自覚が出てきました。フランスのためにやらなきゃいけないことや、フランスに仕えているんだという自覚です。フランスに貢献しなきゃいけないというのは強く思いました」

 日本人であり、かつフランス人でもある。松嶋の今の活動にも通じる、マルチな生き方がそこから始まった。