(5)結婚不要・恋愛不要な若者たち

結婚はおろか、恋愛すら必然性が失われつつある時代

 先ほど、結婚の一形態として“恋愛結婚”をとらえ考察した。ここではその結婚の前に恋愛がある、という“恋愛結婚”の前提に立って、恋愛の必然性について述べていく。

 今年6月に発表された内閣府の「少子化白書」によれば、未婚男女の6割が「(恋人が)ほしい」、4割が「ほしくない」と回答。

 「いまは恋人がほしくない」と答えた未婚男女に理由を問うたところ、46.2%が「恋愛が面倒」、28%が「恋愛に興味がない」という、いわば“恋愛不要論者”たちの姿が浮き彫りになった。

 「自分の趣味に力を入れたい」45.1%、「仕事や勉強に力を入れたい」32.9%という、「ほかにエネルギーが向かっていて、恋愛はいまはよい」という層とはすこし別の視点で見る必要があるだろう。

(I)恋愛は人生においてまったくもって不要なものである、とまでは思っていないが、いまは仕事や趣味などほかの関心事にエネルギーが向かっている
(II)恋愛は人生においてまったくもって不要なものであり、さらにいま仕事や趣味などほかの関心事にエネルギーが向かっている
(III)恋愛は人生においてまったくもって不要なものであり、ほかにエネルギーを向ける仕事や趣味といった対象もない

 この三層はそれぞれ意が異なり、ひとまとめにして考察できる対象ではないだろう。

 番組内でMCのパンクブーブー・黒瀬純さんから「スザンヌちゃんは再婚とか考えないの?」と聞かれると「結婚はもういいかな。だって現実的に息子を育てていて、子どものことを第一に考えなくてはいけない。それに息子が本当にかわいくて、これ以上愛しく思える存在なんて、もう現れないんじゃないかって思うんです」と答える。さらに「息子に彼女ができるような年齢に成長したころ、私にも誰か隣にいたら素敵かな、くらい」と続けた。

 いまの暮らしが幸せで、心から満たされている印象。
 収録後「息子さんに恋していらっしゃいますね」と語りかけた筆者に、スザンヌさんは目を細め、にこっと微笑んでスマホを取り出す――見せてくれたのは裏一面に貼られた愛しい息子さんの写真だった。

 番組内でコメントされた息子さんに彼女ができるくらいの年齢になったら、という点について、10数年は先のこととはいえ、いざそんな時期がきたらさみしくなってしまうのでは? 収録を終えたスザンヌさんへ、そう筆者が尋ねると「いまはまだ1歳と幼くて手のかかる時期。でももう少し子育てが落ち着いてひと段落したら、私も趣味や自分の世界を持って、だんだんと自然に子離れしていけたらなって」と、ご自身と息子さんの今後の人生を見据える母の眼差しを見せてくれた。

 現在は「おばあちゃん、お母さん、私、妹と、みんなで息子を育てています。だから息子は女の子っぽい性格に育つんじゃないかな(笑)」と、家族みんなで協力し合い仲良く子育てされている様子を聞かせてくれた。

 なお、先に挙げた内閣府の「少子化白書」では「恋人として交際する上での不安要素はなにか?」という問いに「出会いの場がない」という回答が55.5%ともっとも多く、「自分には魅力がないのではないか」といった自分に対する自信のなさ、また「自分が恋愛感情を抱けるか不安」「気になる人にどう声をかけていいかわからない」という、筆者が“恋愛迷子”と称する層が見られた。

 出会いがないという声が多く聞かれるなか、結婚に適当な相手に巡り合わなかった場合の対応としてはどうするか。もっとも多かった回答は「無理に結婚することはしない」で41.3%。婚活という言葉がこれだけ浸透し、市場もさまざまに開かれているにもかかわらず、である。

 結婚の必然性。その前段階としての恋愛の必然性。――結婚適齢期と言われる男女が、そもそもその点に疑念を抱いている。

 そんないまの時代だからこそ“交際0日婚”は若者を惹きつけるのではないか。ならば見合い結婚という選択肢は、いまあらためて見直されるべきものではないかと、筆者は考える。

 さて、イマドキ女子たちの結婚事情。いかがだっただろうか?

 男性の草食化が指摘されて久しく、いまや恋愛を必要としない絶食男子まで登場。
 また若い世代が未来に希望の抱きようがない経済状況が続き、いっぽうで生きかたや働きかたの選択肢が多様化する過程で、男女本来の役割までもが失われてきたことも否めない。

 今回は結婚願望のある女子たちの発言を取り上げたが、いっぽうで結婚に対し、もはや諦念すら感じられる若い男女も少なくない。彼らにとって、結婚はおろか恋愛ですら、その必然性が失われつつあるのだ。

 結婚。パートナーシップ。さまざまな視点から考えたい課題である。

文/麻生マリ子(母娘問題研究家) 構成/加藤京子

【INFOMATION】
『クロ女子白書』(FBS福岡放送)

2015年1月にスタート!福岡女子のセキララに語られる女子会トークを垂れ流す番組。年間400回以上もの女子会をプロデュースしている汚ブス研究家・KENJIが女子の本音を引き出し、MC黒瀬純(パンクブーブー)と女性ゲストが別室でモニタリングする。深夜ながら視聴率6%を超えることも。 毎週水曜深夜0時54分~。
動画配信サイト「Hulu」でも閲覧可能。