<ケース2>
迫る2020年東京オリンピックで増えている!? 突然の立退き・家賃値上がりを要求されたら

 2015年8月、ホテル東京オークラ本館が約50年の歴史に幕を降ろしました。これは2019年春の開業に向け、建て替えのため一旦閉館を決めたためです。2019年までの約4年間、2020年東京オリンピックに備えての建替工事が行われます。

 さて、このオリンピックでの建替えはこのような大型施設のみに留まりません。首都圏にお住まいの方に特にご注意頂きたいのが「立退き・家賃値上がり問題」。これは住宅の賃貸借契約を結んでいる場合、どなたにも起こりうる問題です。

 例えば「分譲マンションとして売り出すことになったから出て行ってほしい」「近隣の賃料相場があがったので家賃を値上げします」と言った、オリンピックの需要に合わせた家主側からの要求が出てくることが考えられます。外国人の不動産投資も増えてきている昨今、このような問題は常に身を潜めているのです。

【Q1】ある日来る突然「△カ月以内に退去しなさい」との通知が。そもそも立ち退かなくてはいけないの?
家主・会社側が立退きを住民へ命じる際には、立退きについて「正当な事由」が必要となります。

 これは、たとえ賃貸借契約書内に「借主は立退料の請求はできない」旨の項目があったとしてもです(このような借主に不当に不利な条項は「借地借家法」という法律により無効になります)

 この質問の場合は、家主・管理会社側が新たな利益を求めるための自己都合。決してマンションの老朽化など、住人の身に差し迫った危険を理由とする立退き依頼ではありません。

 このような場合は、まず、「立ち退く理由がないから立ち退かない」旨をきちんと伝えましょう。

 多くの場合は「立退きの際に正当な立退料を支払う」ということで解決がなされます。立退料の金額はケースバイケースですが、100万円単位になることも決して珍しくありません。

 こうした立退料の交渉は、法律家に依頼するのが確実ではありますが、ハードルが高いですよね。立退きを求める側も、ある程度の立退料が必要であることは認識していますから、「立退料を支払ってもらえるのか」を確認したうえで、まずは相手から立退料の具体的金額を提示させるようにしましょう。

 最初の提示金額は幅をもたせた金額であることが多いため、引越費用や賃料の一定期間の保証分としてどの程度上乗せしてほしいかを伝えるとよいと思います。

 最終的に法的手段で決定すれば金額は上がることが多いですが、それにかける手間や法律家への報酬を考えると、立退料についての相手の提示金額が非常に低い、という場合でなければ、ある程度のところで折り合いをつけるのが無難です。

 どうしても納得できない場合には、泣き寝入りにならぬよう、やはり法律の専門家に相談することになると思います。

【Q2】更新時に起こりうる家賃の値上げ。お金の問題はどう解決?
家賃の値上げを要求された場合、まずはしっかりと家主・管理会社側と話し合いを行ってください。話合いはすべてのトラブル解決の基本になります。

 家主・管理会社側は基本的には借主との協議なしで家賃の値上げはできないことになっています。

 例外として、税金の負担増加や土地の価格上昇の際に、住人の同意なしに家賃の値上げができることが法律で認められています。

 ただ、こうした法的手続には時間がかかりますので、結局は賃料の増額幅について、両者で話合いをして折り合いをつけることがほとんどです。その場合には、自分の主張を擁護するものとして、近隣の賃料相場を調べておくことをお勧めします。今の世の中はインターネットでだいたい賃料相場が把握できるので、そうした情報を自分のデータ・証拠として押さえておきましょう。

 また話合いをしても、どうしても自分が納得いかない結果になった場合、裁判を起こすことも可能ではあります。ですが、家主・管理会社とはそこに住み続ける限りお付き合いが続いていくものです。その後の関係に影響が出てくる可能性もありますので、お互いの妥協点もしっかりと把握し、協議をなるべく円満に終息させるのが得策だと思います。