社会に出て働く女性(卒業目前の4年生と就職活動を控えた3年生を対象)に向けて、跡見学園女子大学で開催された「女性のための健康セミナー」。広尾まきレディスクリニックの手塚真紀院長が、20代女性が知っておきたい女性特有の病気や月経とのつきあい方、妊娠や避妊など、女性ホルモンにかかわる基礎知識について講演しました。その中から7つの話題を紹介します。

跡見学園女子大学 山田徹雄学長が開会のあいさつを述べた
跡見学園女子大学 山田徹雄学長が開会のあいさつを述べた
同大学就職部部長、マネジメント学部生活環境マネジメント学科石渡尚子教授が、セミナーの企画趣旨を説明した
同大学就職部部長、マネジメント学部生活環境マネジメント学科石渡尚子教授が、セミナーの企画趣旨を説明した
広尾まきレディスクリニックの手塚真紀院長
広尾まきレディスクリニックの手塚真紀院長
手塚院長が、働く20代の女性に知っておいてほしい女性の体と病気の予防について語った
手塚院長が、働く20代の女性に知っておいてほしい女性の体と病気の予防について語った

 最初に、「女性が社会に出て活躍することが望まれている中、そのベースとして健康管理はとても重要です。社会に巣立つみなさんにとってこのセミナーが、健康管理がしっかりできる社会人になるために有意義な時間となることを願っています」と、山田徹雄跡見学園女子大学学長から開会の挨拶がありました。次にセミナーの企画者である就職部部長の石渡尚子教授が、卒業生や自身の体験を交えながら、「女性特有の病気になったことが原因でキャリアを諦めざるを得なくなる人がいます。それは自分が悔しいだけでなく、日本経済にとっても大きな損失です。あらかじめ知識を持っていれば、また病気を早く発見できれば予防をしたり、働きながら治療ができることもたくさんある。そのことをわかって欲しくて企画しました」と目的の説明をしました。

 登壇した広尾まきレディスクリニックの手塚真紀院長は、「女性は月経が始まってから閉経するまでに、かなり体が変わりますので、ライフステージごとに気を付けたい健康管理のチェックポイントが違ってきます。女性の体を理解するための基礎として、まず、女性ホルモンと月経(生理)のことを知ってください」と切り出しました。

心得 その1■
女性の体は、排卵日を境に変化する
月経前の不調は、誰にでも起きる

 月経の始まった日から次の月経が始まる前日までを1周期と呼びます。この期間が28日なら28日周期、30日なら30日周期といい、自分の月経周期から14を引いた数字の周辺に排卵日があります。最初に、「女性の体は、排卵日を境に体調が変化する」ということを知っておいてください。

 月経を司る女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。月経開始から排卵にかけてエストロゲンの分泌量が多くなり、排卵後から月経前までは相対的にプロゲステロンが多くなります。エストロゲンは月経を起こすのに不可欠なホルモンで、子宮内膜(経血になる部分)を厚くします。プロゲステロンは受精卵の着床を助け、妊娠を維持するホルモンで、子宮内膜を成熟させます。

 「排卵後はプロゲステロンの働きで0.5度くらい体温が上がります。排卵前までは体調がよく、排卵後から月経前までは、むくみが出たり、イライラする、ニキビが多くなるなど不調が出やすい時期になります。でもそれは女性として普通のことですから、心配する必要はありません」(手塚院長)

心得 その2■
月経前にイライラしたりするPMS
周期との関係を知っておくだけでもラクになる

 月経前3~10日ぐらいの間に、8割の人がなんらかの症状が出ると感じています。代表的な症状を挙げたのでチェックしてみてください。

 症状があっても軽ければいいのですが、日常生活に支障があるほどつらい場合は「月経前症候群(PMS)」と呼び、とくに精神症状が強く、重症なものを「月経前不快気分障害(PMDD)」と呼びます。日常生活に差し障るほどの症状がある場合は治療を受けましょう。治療には低用量ピルや漢方薬、抗不安薬、選択的セロトニンレセプター阻害薬(SSRI)などが使われます。

 また、月経と気になる症状の記録をメモしておき、その関係を調べてみるのがお薦めです。「この時期はイライラする、集中力が落ちるなど、自分の周期との関係が分かっていれば、むやみに心配する必要もなくなりますし、その時期に重要な会議を入れないなど対策も立てやすくなります」(手塚院長)。月経と症状の関連を知っておくだけで、PMSがラクになります。

 食生活も大事です。「月経前は過食、カフェインやアルコールの摂りすぎに注意して、野菜をたくさん食べてください」(手塚院長)。軽い運動をし、ストレスはためないように。

 「月経前は心身のバランスが崩れやすいので、意識してビタミンや、エストロゲンに似た作用のある大豆などをとるといいといわれます。大豆の有効成分は大豆イソフラボンから腸内細菌の作用で作られるエクオールですが、最近の研究で日本人の半数は大豆を食べてもエクオールが体内で作られないことがわかってきました。そんな人は、サプリメントで補うのもいいでしょう」(手塚院長)

心得 その3■
月経痛がつらいなら子宮内膜症を疑って
不妊の原因にもなるので我慢せず治療を

 20代に多い月経の悩みは月経痛。ただ、程度は人によって違い、ほとんど普段通りに過ごせる人もいれば、鎮痛薬が必要な人、薬をのんでも寝込む人もいます。

 月経痛自体は病気ではありませんが、症状が重ければ治療の対象になります。とくに、以前と比べてだんだん重くなってきた人は要注意。若い世代に増えている「子宮内膜症」かもしれません。

 「子宮内膜症は、本来なら経血として子宮の外に出て行く子宮内膜が卵巣や子宮の筋肉の中に飛び火して、月経のたびにそこが炎症を起こす病気です。強い月経痛を伴い、症状は月経のたびに悪化していきます。現代女性は晩婚で出産回数も少ないので、生涯で体験する月経の回数が多くなっています。昔の女性の一生の月経の回数は50回、現在の女性は450回という統計もあり、実に9倍。月経の回数が多くなったこともこの病気の増加の一因です」(下図)

 月経痛がひどく、量が増えてきた、鎮痛剤が効かない、経血にレバーのような塊が出るなどの症状があれば、子宮膜症の可能性があります。

 治療はホルモン剤の内服が代表的。「子宮内膜症は放置すると不妊の原因になります。治療を受ければ楽になるだけでなく、将来、子どもが欲しいと思ったときにあわてなくていいように早く治療してほしいのです」(手塚院長)