心得 その4■
月経不順の一番の原因はダイエット
周期の乱れは「命の危機」を体が感じたサイン

 月経周期は25~40日ぐらいが普通で、多少ばらついても心配はありません。ただ、60日以上来なかったり2週間で来たりするなら「月経不順」という正常でない状態です。

 月経不順は、将来の不妊につながる場合もあります。「無排卵月経」といって、月経のような出血はあるのに実際は排卵が起こっていないことがあるのです。

 排卵があるかどうかは、基礎体温をつければだいたいわかります。月経周期の前半の体温が低く、後半は高い2相になっていれば大丈夫。でも、明確に2相に分かれていない場合は排卵が起きていない可能性が高いので、治療したほうがいいでしょう。通常、ホルモン剤や漢方薬などが使われます。

2相になっている青いグラフ(左)と、2相になっていないピンクのグラフ(右)
2相になっている青いグラフ(左)と、2相になっていないピンクのグラフ(右)

 若い人が月経不順になる最大の原因がダイエット。「極端に体重を減らすと、体は生命の危機と感じるため、生命維持を最優先して妊娠出産にかかわる排卵が止まります。その結果、月経が止まったり、周期が乱れたりするのです。ですから、月経不順や無月経は、体が命の危機を感じているサインだと思ってください。携帯などに月経の始まった日を入れておくと、周期の変化に早く気付けますよ。

 新社会人の月経が乱れやすくなるのは6~7月頃。そうなったら、ストレスがあるんだなと考えて、意識的にリフレッシュをしてください」(手塚院長)

心得 その5■
35歳を境に卵子の老化が加速し不妊が増える
ライフプランの中に妊娠出産を組み込んで

 20代は仕事に全力を注ぎ、30代になってから妊娠・出産を考えようと思っている人は少なくないでしょう。しかし、30代になっていざ出産をと思ったとき、妊娠に苦労する人もまた少なくありません。

 女性の妊娠率は35歳ぐらいから急低下し、その一方で流産率は上昇します。さらに21トリソミー(ダウン症候群)などの原因となる染色体異常も起こりやすくなります(上図)。原因はいずれも卵子の老化。

 「35歳を過ぎると妊娠・出産しにくくなる事実を知っておいてください。とはいえ若いほうがいいとも一概にはいえません。自分のキャリアの基盤を作ってから妊娠・出産することは、一生という長い時間軸で考えたときにメリットがありますし、35歳以上で出産した母親は精神的に成熟しているので子どもにとってよいという報告もあります。いつまでも産めるわけではないことを踏まえた上で、妊娠・出産は自身のライフプランを考えて決める必要がありますね」(手塚院長)

心得 その6■
1年に1度は子宮頸がん検診を
妊娠発覚後に「子宮摘出」の悲劇は避けたい

 妊娠を妨げる病気としてもう一つ、20代から気を付けて欲しいのが子宮頸がんです。妊娠初期には子宮頸がん検診をしますが、そこでがんが発見され、妊娠も中断し、子宮を摘出せざるを得なかった人もいます。がんは高齢者の病気と思いがちですが、子宮頸がんは20代、30代にも増えており、35歳後半が発症のピークです。

 子宮頸がんは、性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で起こる感染症。HPVにはほとんどの女性が生涯に一度は感染しますが、多くの場合、発症しません。しかし一部の人で感染が持続し、子宮頸部の細胞をがん化させてしまうのです。感染が続くか、がんが発症するかなどは体質によるといわれます。

 「以前は進んだ状態で見つかることが多く、子宮を取らなければならない病気でしたが、いまは8~9割が初期で見つかっています。早期発見して手術で部分切除すれば、その後、妊娠も出産もできます。20歳以上の女性は1年に1回、検診を受けましょう」(手塚院長)。

心得 その7■
性交後72時間以内なら間に合う
望まない妊娠を避ける「緊急避妊ピル」

 30代の悩みは不妊ですが、その前の20代の悩みは、「避妊」でしょう。仕事をしている女性なら、低用量ピルなどを使って計画的に避妊するでしょうが、万が一、避妊に失敗したかもという事態が起きた時にもあわてないように知っておいてほしいのが「緊急避妊ピル(アフターピル)」。

 「『不完全な避妊法での性交渉があったけれど妊娠を回避したい』という事態が起きたら、72時間以内に黄体ホルモン薬をのむと約8割の確率で妊娠を回避できます。こんな方法があることを知っているだけで、安心できるはず。緊急避妊ピルは処方が必要なので、産婦人科に相談してください。」(手塚院長)



 「就職後や就職活動中には、自分はなんてダメなの、と落ち込むことが増えるでしょう。でも、学ぶことで自分の武器を増やし、自分を好きになって、自分のことをゆっくり知りながら人生を楽しんでください」とエールを贈って話を終えました。

女子学生たちが手塚院長の話に熱心に耳を傾け、メモを取っていた
女子学生たちが手塚院長の話に熱心に耳を傾け、メモを取っていた

構成・文/竹本和代、撮影/新関雅士