岡本さんの転機 人生を楽しんでいる人たちとの出会い

 岡本さんが留学したスタンフォード大学は、米国カリフォルニア州のシリコンバレーにある。シリコンバレーといえば、数多くのスタートアップやベンチャー企業が集まる地域。こうした環境が影響してか、岡本さんが通っていたロースクールには、世界中からユニークな人たちが集まっていたという。

 「クラスメートの中には、弁護士として働きながらスタートアップを起業している人や、投資家として活動している人もいました。その人たちは、みんな自分のやりたいことをやっていて、本当に『人生が楽しそうだな』という印象だったんです」

岡本さんは、留学によって転機を迎えた
岡本さんは、留学によって転機を迎えた

 留学中は、クラスメートとの交流だけでなく、成功している起業家や法律家、VC(ベンチャーキャピタル)の講演を聴く機会も多かったという。

 「講演の中で『成功した理由』といった話になると、『やりたいことを、情熱を持ってやっているから』というシンプルな回答が多かったんです。仕事で成功している人たちは、働くことの根底に課題意識があり、すべての行動や意思決定が、その課題を解決するために行われている――つまり『ミッションドリブン』で働いている。だから、ロースクールのクラスメートも有名起業家たちも、『人生が楽しそう』なのだと気づいたんです」

 弁護士として順調にキャリアを築いているように見える岡本さんも、「留学前には忙しくて目の前の仕事をこなすことで精いっぱい。締め切りに追われて日々が過ぎていき、仕事や人生を楽しんでいる余裕はありませんでした」と語る。

 「時には『何のために仕事をしているんだろう?』と考えることもあったので、留学先でそれまでとは違う仕事観や人生観を持った世界に触れて、驚きました。そして、自分もそういう世界に身を置き、ミッションドリブンで働きたいと思うようになったんです」

 こうして、岡本さんはその思いを行動に移すため、ある決断をする。

★下編では、次のストーリーを展開
・どうやってメルカリに転職したのか
・岡本さん流、決断のコツ「リスクは●●しないこと」
・次なるステージとしてアンドパッドを選んだ理由は?
下編「異色の経歴の弁護士が『普通』の呪縛から脱却できた理由」

取材・文/青野梢(日経xwoman doors) 写真/小野さやか