前編では、「自分だけに時間を使うのはわがままなの?」というお悩みに対して、タレントのホラン千秋さんにアドバイスを聞きました。後編では、ホランさんが周りの人たちと比べてしまっていた時代を経て、どう視野を転換していったのかを聞きました。私たちと同じように悩んでいるホランさんの素顔がのぞけたインタビューです。

【前編】ホラン千秋が回答「自分だけに時間を使ってはだめ?」
【後編】ホラン千秋 芽が出ず悩んだ20代、自ら吹っ切り転機へ ←今ここ

ホラン千秋さん
1988年、東京生まれ。タレント、キャスター、ラジオパーソナリティーとしてマルチに活躍する。現在は、「Nスタ」(TBS系)、「SONGS OF TOKYO」(NHK総合)をはじめ、バラエティー・報道番組などで数々のレギュラー番組に出演するほか、新聞でも連載を持つ。

「周りと比べる」意識を変えた、米国留学

 幼い頃から芸能界で働き始め、今の事務所に所属したのは14歳のとき。10代の多感な時期は、つい周りの人と比べてしまうこともありました。「自分が落ちてしまったオーディションに、同じ事務所のあの子が受かったのか……」とか、「△△さんはドラマに出ているのに、私はちっとも出られていないな」とか。テレビを見れば、自分の後輩が出ているCMを目にする――。そのたびに、胸が苦しくなっていたんです。

 「人と比べても仕方がない」と、気持ちが変化してきたのは20代に入ってから。初めはきっと、そう自分に言い聞かせることで不安を取り除きたかった部分もあったと思うのですが、だんだんと本当に「人と比べても仕方がない」と思うようになりました。何か大きな出来事があったわけではないけれど、大学3年生のときの米国留学は、意識を変えた一つだったかもしれません。

 実は大学進学も、するかどうか迷っていました。結果として進学しましたが、自分の中では「仕事で忙しくて、大学に通えなくなるくらい売れっ子になる」のが目標だった。けれど現実は、大学に通えてしまっている。だから、売れていない自分にすごく落胆したし、屈辱的でした。きらきらと大学生活を謳歌している人を横目に、サークルにも入らず、「私は今ここにいるべきじゃないのに。どうしてこんなところにいるんだろう」と思いながら、教室の一番前で講義を受けて、ひたすら勉強に励んでいましたね。今思い返しても、あの頃はやさぐれていたなと思います(笑)。

「今思い返しても、大学生時代はやさぐれていたなと思います(笑)」
「今思い返しても、大学生時代はやさぐれていたなと思います(笑)」

 そうやって、オーディションに行っては落ち、悔しさをかき消すように学業に励む日々を繰り返していたのですが、20歳になる直前にふと気づいたんです。「『10代のうちに、どこかの誰かが私を見つけ出してくれて、売れっ子になる』というおとぎ話のようなことは、私には起きないんだ」と。

 オーディションに受からないのを、「役が私に合わなかっただけ」「タイミングが合わなかっただけ」と、「誰かのせい」にしていた。自分ではなく、どこか別のところに受からない理由があるのだと思うことで、「売れない」という現実から目を背けたかった。

 けれど、20代になろうとしているのにまだ芸能界で芽が出ないということは、「私のほうに問題があるんだ」と目が覚めました。自分から何もアクションを起こしていない受け身の姿勢の私が、なぜ、「仕事は誰かが取ってきてくれたり自然に降ってきたりするもの」だと思っていたんだろうと。そこで、「ガラッと環境を変えたい」と留学を決意したんです。